最近、男性育児休暇が話題ですね。

2020年7月1日に公表された「選択する未来2.0」の中間報告では、男性育児休暇を義務化したり、強力なインセンティブを与えるといった提案もされたりしており、国家として現状の女性中心の育児を改革していく流れとなっています。

かくいう私も、現在育児休暇を取っているのですが、そのことを話すと、多くの方から、「初期研修医って育児休暇取れるんですか!?」と聞かれます。

結論から言うと、初期研修医であっても、2年間の研修期間の間に育児休暇を取得することは可能です。今回は、初期研修医の育児休暇について説明していきたいと思います。

 

育児休暇は、育児・介護休業法で定められており、原則として子どもが1歳になるまで(パパ・ママ育休プラスやパパ休暇などの制度を使用することで期間の延長制度などもあり)取得が可能です。

厚生労働省の2019年度の調査では、女性の育児休暇取得率は83%に対し、男性育児取得率は7.48%と極めて低い取得率となっています。この現象は医者の現場でも同様です。少し古いデータになりますが、2014年2月に日本医師会から公表された「男女共同参画についての男性医師の意識調査」では、男性医師の育児休暇習得率は2.6%と極めて低くなっています。育休取得については、82.6%の男性医師が「育児休暇取得を考えてことがなかった。」と答えており、私の周囲を見ても、「医者は24時間365日病院にいるべきだ!育児は妻に任せて、男は仕事だ!」まで過激ではないにしても、同様のことを考えている男性医師が大多数の様に感じます。特に、初期研修医は医学部卒業後の2年間の研修期間であり、有給取得すら気を使う傾向がある様に感じます。最近は働き方改革の効果もあり、有給取得率も上がってきていますが、育児休暇については、「育児休暇を取ると研修を2年間で修了できない。」と言った誤解が男性研修医の育児休暇取得の妨げになっていると考えられます。

 

では、ここからが本題です。

初期研修医の研修修了の要件については、厚生労働省の「医師臨床研修における修了等の基準に関する提言」(平成17年6月)に記載があります。以下が、部分抜粋になります。

 

5 臨床研修の修了基準

5-1 

(1)休止の理由

 研修休止の理由として認めるものは、傷病、妊娠、出産、育児、その他正当な理由(研修プログラムで定められた年次休暇を含む)とするべきである。

 

(2)必要履修期間等についての基準

 研修期間(2年間)を通じた休止期間の上限は90日(研修機関(施設)において定める休日は含めない)とするべきである。

 各研修分野に求められている必要履修期間を満たしていない場合は、選択科目の期間を利用する等により、あらかじめ定められた臨床研修期間内に各研修分野の必要履修期間を満たすよう努めるべきである。

 

(3)休止期間の上限を超える場合の取扱い

 研修期間終了時に当該研修医の研修の休止期間が90日を超える場合には未修了とするべきである。この場合、原則として引き続き同一の研修プログラムで研修を行い、90日を超えた日数分以上の日数の研修を行うことが必要である。

 また、基本研修科目又は必修科目で必要履修期間を満たしていない場合にも、未修了として取扱い、原則として引き続き同一の研修プログラムで当該研修医の研修を行い、不足する期間以上の期間の研修を行うことが必要である。

 

 

上記をまとめると、

①必修科のローテートを修了し、

②休暇取得は90日以内であれば

問題なく、初期研修の修了条件を満たすことができます。また、雇用形態にもよりますが、非常勤扱いの研修医であっても、育児休業給付金や社会保障料の免除なども条件を満たせば受けることができます。

つまり、制度上は、たとえ研修医であっても育児休暇を取得することが可能というわけです。しかし、実際取得しようとすると、「研修中断で周囲の研修医と差が出るのではないか。」、「育児休暇を取得したいけど、上司は認めてくれなさそう。誰に相談すればいいのかわからない。」などの問題が出てくると思います。次回の投稿では、そういった問題について説明していきたいと思います。

 

最後に、私は現在育児休暇を取得しており、妻とともに子育てをしておりますが、二人で行っても大変なのが育児です。沐浴などはもちろん、原因不明の夜泣きや、子どもの皮膚トラブルなど、病院にいてはたとえNICUや小児科をローテートしても経験できない体験が目白押しです。自分の子どもの育児ができる機会は、人生でそう何度も訪れるものではありません。せっかくの機会ですから、一日中育児をする経験をぜひ選択してみてはいかがでしょうか。