本日は、私が育児休暇を取得した時に不安に思ったことや、周囲から聞かれたこと、上級医から言われたことからいくつかを抽出し、私の意見を述べたいと思います。今後育児休暇を取得する皆さんの決断の一助となれば幸いです。

 

①育児休暇を取得すると、周囲の研修医に後れを取るのではないか

 これが、育児休暇取得を考える際の最大の不安ではないかと思います。初期研修医としての研修期間は一般的には2年間であり、この期間は必ず指導医の指導の下診察を行うこととなっています。指導医から直接指導を受けながら、学生ではできなかった侵襲的な行為も行えるので、初期研修の2年間は非常に重要な期間であることは間違いありません。

 では、育児休暇を取得することで周囲の研修医に後れを取ることがあるのでしょうか?短期的にみると、数か月分の医学知識の差はあるかもしれません。しかし、長い医師人生を考えると、それは大きな差にはならないと思います。そればかりか、医学ばかり勉強してきた40年と、育児についてもしっかりと関わった40年では、医療者としての深みに差が出てくるのではないかなと思います。育児をしていて思うのは、親と言う生き物は、自分の子どもの変化については極めて敏感であるということです。病院で見た他の人の子どもの皮疹と、自宅で見た自分の子どもの皮疹では、医師としての自分のアセスメントに差が出ている気がします。大丈夫とはわかりつつも、自分の子どもではどうしても不安がぬぐい切れません。医療者でもそうなのですから、一般の方の不安はそれ以上かもしれません。この不安は、24時間医療体制で、いつでも検査・治療が可能である病院のなかでは味わうことのできないものだと感じます。この不安を一度味わうと、深夜2時の飛び込み受診をする両親の気持ちを痛いほど理解できます。患者背景、患者感情を真の意味で理解するには、自分自身が患者にならないとわかりません。子どもは、私たちにその貴重な機会を与えてくれているのですから、あとでいくらでも学ぶことのできる数か月の医学知識を育児より優先するのは、長期的に考えると極めてもったいないのではないでしょうか。

 

②男が育児休暇取ってもすることないよ。それよりも仕事をした方が奥さんも喜ぶでしょ。

 この発言の答えは、これを言っているのが男性医師だけということがすべてではないでしょうか。女性医療スタッフに聞くと、「旦那が育児を手伝ってくれなかったから、私が長く育児休暇を取らざるを得なかった。」と言う発言は非常によく聞かれます。普段の家事に加えて、授乳したり、あやしたりなど、マルチタスクを同時に行う必要があり、一人でこれを毎日行うとなると、自分自身の生活の多くが犠牲となってしまうでしょう。育児を行う生活に慣れるまでの1ヶ月でも、育児休暇を取得してみるのはいかがでしょうか。女性は産後原則8週間(希望があり、医師の許可があれば6週間)は産後休業をする必要があり、気が付いたら育児の中心が女性に傾いてしまい、女性に大きな負担を強いってしまうことが考えられますので、男性は特に育児について意識を傾けるようにしましょう。

 また、日本は累進課税制であるので、節税の面からも、女性のみに育児を任せるのではなく、男性・女性ともに時短で仕事をするほうが、男性のみが仕事をして女性が専業主婦になりよりもいいのかもしれません。この辺の医師の税金対策については、いつかまとめたと思いますので今日は割愛します。

 

③そもそも、研修医って育児休暇を取れるの?

これについては、以前の記事で詳細を記載していますので、ぜひ参照してみてください。

結論から言うと、初期研修医も最大90日間は育児休暇を取得することは可能です。 https://drandns.hatenablog.com/entry/2020/10/10/231607?_ga=2.36026784.1254853777.1602473357-775626982.1579499091

 

 

いかがだったでしょうか。

 聞かれた機会の多い質問3つについて、私見を述べてみました。上記以外や、上記について詳しく聞きたいときは、コメントいただけると、気が付いた時に返信させていただきますので、遠慮なく記載してください。