アルコール依存症の初期治療

アルコール依存、アルコール性肝障害の症例での治療をまとめてみました。アルコール患者はproblemの宝庫(当院救急科Dr.談)というように、様々な注意を要する患者さんでした。一般的な部分を、自分のoutputもかねてまとめてみます。

 

①栄養

 アルコール多飲者は、食事が偏りがちです。リフィーディング症候群に注意しながら栄養開始しなくてはいけません。体重×10(kcal)を一日カロリーとして開始。100~200kcal/日ずつ増量していきます。腎機能、Na、K、Cl、K、P、Mgを連日フォローアップし、できれば心電図モニターなどを装着しておくといいです。急性期は末梢静脈栄養でもいいかもしれませんが、嚥下機能や消化管の萎縮を防ぐためにも、できるだけ経口、経腸栄養を優先させるべきだと思います。今回の症例では、入院3日目に経口摂取トライしましたが、後述のジアゼパムの影響で摂取できなかったので、経鼻胃管挿入し、経管栄養を開始しました。その後、言語聴覚士に嚥下機能評価と嚥下リハビリテーションを依頼し、入院7日目には経口摂取のみで栄養を摂取しきるようになりました。

 

 カロリーと同時に、ビタミンにも注意を払う必要があります。特に、VitB1欠乏に注意が必要です。フルスルチアミン 500㎎×3回/日 2日間→250㎎×1回/日 5日間→100㎎内服 1週間でウェルニッケ脳症予防しました。一度発症すると、神経学的予後が不良のため、しっかりと対策しましょう。過量投与しても、過剰分は尿から排泄されるので、尿量が保てていれば、オーバー気味でも投与してOKです。

 

 また、一般的ではないですが、今回の症例では、大球性貧血を来していました。フォリアミン錠3T3×、メコバラミン 500μg 3T3×で葉酸、VitB12を補充しました。外注が帰ってきて、葉酸、VitB12は低下ないことを確認できたので、内服終了にしています。アルコールによる代謝異常から大球性貧血を来していると思われました。

 

②肝性脳症

今回の症例では、羽ばたき振戦など、肝性脳症を疑う所見は乏しく、あまり意識しませんでした。基本的には、出現した症状にたいする対症療法がメインなので、症状が出現したら開始するのでいいのではないかなと思います。栄養開始の面で、へパンED内用液を使用しました。

 

③アルコール離脱症候群

大離脱は1週間を目安に終了するといわれています。通常は、ジアゼパム錠(5)3T3× 3日間→ジアゼパム錠(2)3T3× 4日間投与で様子見ますが、肝障害がある時は半量から開始します。

今回は、ジアゼパム錠(2)3T3× 3日間→ジアゼパム錠(2)1.5T3×で1日投与しましたが、傾眠が強く、経口摂取の阻害因子となってしまってしまいました。そのため、5日目にジアゼパム錠(2)1T2×→0.5T1×と漸減しました。離脱症状は認めず、ジアゼパムをoffにした入院7日目からは意識もしっかりとし、経口摂取良好となりました。漸減するといいというエビデンスはないので、スパッと切ってみるのも一つの手段かもしれません。